1: Ranatra (1783) ☗1☗2☗82018-02-17 03:19

（ヨツンヴァインカップ（有段）より『ノンケ・バーサス・アンフェルス』）
全棋界を電子ネットワークが覆いつくし、ソフト研究が普遍化した未来。完全解析など稚気じみた夢。人々はパソコン画面を覗き込み、夜な夜なサイバースペースへ逃避する。政府よりも力を持つメガコーポ群が、連盟を背後から操作する。ここは81道場。淫夢体制を敷く迫真将棋部の中心地だ。

下界を見下ろせば「ヤグラミ」「魅力的な」「少し高いが」などとショドーされた垂れ幕が下がり、街路を行き交う人々の購買意欲を煽っている。重金属酸性雨を気にする通行人はいない。
ここはマルノウチ・スゴイタカイ・ビル屋上の一角。将棋盤と駒、コマダイなどが置かれ、それらを挟むように二人の男が正座している。異様な光景だ。
マグロチェッペリンの広告ネオン光が盤に反射され、二人のメンポを照らしている。ニンジャだ。
一人のニンジャ装束はミコめいた赤と青。もう一人は自身の異常性癖を主張するかのようにノンケ色である。
「ドーモ、ノンケ＝サン。アンフェルスです」
「ドーモ、アンフェルス＝サン。ノンケです」
将棋においてアイサツは神聖不可侵の行為、アイサツされれば返さねばならぬ。
お辞儀からコンマ1秒ノンケが先手を取った！
「イヤーッ！」カクミチ！
「イヤーッ！」カクミチ！
「イヤーッ！」イビシャ！
プロクシーのイクサで頻出する相居飛車模様である、かに思われた……
「イヤーッ！」飛車が消える！12
アンフェルスは飛車を四間へと滑らせたのだ。
読者の中にニンジャ動体視力をお持ちの方がいれば、目の当たりにしただろう。
居飛車によりノンケの駒組を拘束したのち、アンフェルスの得意とする対抗系へ誘ったのだ。
おお、ゴウランガ！何たるニンジャ構想力か！

ノンケの眉がピクリと動く、早くも作戦負けか。
「ノンケゆえ実際ホモを殺す」イミシン！
返事を待たず角交換ののち、ピシャリと角を打った。21

「グワーッ！」突如アンフェルスが血の泡を吹く。
これはマンモス・ジツ奥義『ヘップバーン』だ。囲碁では禁じ手とされる悶絶の一手である。

勝負は決まったかに思われたが、アンフェルスの目の光は失われてなかった。

（「ノンケ・バーサス・カイ」へと続く）