大会: 戌年:ヨツンヴァインカップ(有段)
先手: holespectacle (1910)
後手: tono2048 (2009)
対局開始日時: 2018-01-06 21:30:32 +0900
ルール: 平手(NR) 10分 + 60秒
先手: holespectacle (1910)
後手: tono2048 (2009)
対局開始日時: 2018-01-06 21:30:32 +0900
ルール: 平手(NR) 10分 + 60秒
この棋譜へのコメント
1: deteiugin (1815) 2018-01-07 06:04
『銀冠穴熊は潰れている』 ▲穴眼鏡(holespectacle)―△との(tono2048)観戦記 文責:でっていう(deteiugin) 昨年末に開幕したヨツンヴァインカップ(正式名称『戌年だよ。ヨツンヴァイン杯』)準決勝第二局が行われた。いよいよ大詰めとなる舞台に駒を進めたのは▲穴眼鏡姉貴と△との兄貴。いずれも上位進出を予想されていた実力者同士のゴールデンカードとなった本局はどのような展開を見せるのだろうか。 穴眼鏡姉貴は一回戦でかつどん兄貴の角交換四間飛車に対し終始手堅い差し回しで圧倒、二回戦でも頭蓋兄貴の向かい飛車からの攻めを丁寧に受け止め銀冠を無傷で残す快勝を見せた。界隈随一の手厚く、負けない将棋はどこまで進化を続けるのか。 一方のとの兄貴は一回戦で南部改式兄貴の仕掛けた乱戦に的確に対応、上位者の余裕を見せた。二回戦ではだいふく兄貴の向かい飛車に対し中盤のねじり合いから端攻めを決め制勝。序盤巧者のオールラウンダーが初戴冠を目指す。 4手目 いつものように居飛車を明示した穴眼鏡姉貴に対しとの兄貴は△4四歩と角道を止める趣向を見せた。振り飛車退治は穴眼鏡姉貴の十八番とするところだが果たして。 6手目 △4二飛 早くも四間飛車に構える。雁木の流行で△3二銀~△3三角と態度を保留する指し方も有力となっているが、用意してきた作戦で堂々と迎え撃つということか。 16手目 △9四歩 居玉のまま美濃囲いを作り、端歩を突く。a藤井システムだ。やはり穴熊に組ませての持久戦では分が悪いと見ているのだろう。ここまで猛スピードで進んでいるだけに予定通りの局面ということか。 17手目 ▲9六歩 端歩を突き返すのは銀冠穴熊を目指す駒組だ。居飛車穴熊との分岐点だが、ノータイムで指されただけに穴眼鏡姉貴も作戦を決めていることが伺える。 31手目 ▲6六角 銀冠穴熊の骨子となる一手。△6五桂の両取りを避けつつ玉を入場させる狙いのある柔らかい手だ。 32手目 △6五歩 後手番だけに代えて△5四銀~△6五銀~△5四銀と千日手狙いの駒組も考えられる。b女流棋戦での類例もある局面だがここも5秒の小考で△6五歩。いったいどこまでが研究範囲というのか。 40手目 △6二玉 ついにとの兄貴の作戦が正体を現した。36手目△4一飛からの継続手で、手損ながら8筋に飛車を振りなおして玉頭を攻める狙いだ。ユキ(@YukiN_shogi)氏がtwitter上で発表した構想で、巷ではcスイッチシステムなどと呼ばれている。 41手目 ▲6八金右 39手目▲9九玉と合わせて73秒の考慮。いったん穴に潜った以上、しばらく受けに回る展開は甘受する方針だ。 48手目 △4二角 3三のままでは角が働かない。ここが8筋9筋を睨む好位置だ。 53手目 ▲5五銀 受け一方になるわけにはいかない。突き捨てた5筋を生かして天王山に銀が進出。検討室では外国人兄貴も交えた32人もの観戦者が熱戦を見守る。 56手目 △8六歩 94秒の考慮で慎重に拠点を構築。強烈な角のラインに加え端攻めも絡めれば後手の攻めが途切れることはなさそうだ。 60手目 △同金直 綾をつける焦点の▲5三歩に対する応手。検討室では自然な△同角が予想されていたが▲5四歩~▲4四銀や▲2四飛など大駒を捌かれる展開を嫌ったか。自ら角筋を止めるだけに気づきにくい手だが、指されてみると先手にこれといった攻め筋がない。落ち着いた指しまわしで検討室でもはっきりととの優勢の声が出始めた。 64手目 △9七歩 前手▲4四銀を手抜いてここで攻め合いに。仮に▲5三銀成ならば△同角で自然に角が働く。カナ駒を渡すと反動も猛烈なため穴眼鏡姉貴は苦しいが粘れるか。 68手目 △8四桂 △9五香などもありそうだが要の銀を狙って手厚く迫る。自玉はひとまず安泰なので攻めを切らさないことが肝要だ。 75手目 ▲8三歩 懸命に紛れを求める。△同飛と取らせて将来の▲8四銀や▲7五桂が飛車に当たるようにしている。 81手目 ▲8八玉 穴熊が崩壊した現状では早逃げも止むをえない。右辺への脱出に一縷の望みを託す。 88手目 △7六桂 しかしこの桂跳ねが決め手か。▲同銀なら△5七角▲6八金打△5八金で必至がかかる。後手玉は角を渡さなければ危ない筋すらない。 92手目 △8八成香 代えて△5八銀でも必至がかかるが詰ましにいく。 98手目 △5八金 うっかり△4五桂ではちょっとした事件に。一見上に逃がすようだがこちらが正着。 100手目 △6四角 にて穴眼鏡姉貴の投了となった。以下▲5六玉に△4五金までの詰み。盤上の角を綺麗に使った見事な収束で、との兄貴が決勝に駒を進めた。 終局直後、「研究が刺さりました」ととの兄貴が一言。42手目△8五歩までは研究範囲と話しており、相居飛車も想定したものの、序盤でリードを300~400点ほど奪えるこの戦型を研究していたという。感想戦では銀冠のまま右銀を繰り出す急戦や、▲3六歩を突かない変化についても調べられたがいずれも居飛車持ちの変化は見つからなかった。穴眼鏡姉貴もスイッチシステムの存在を知ってはいたものの実戦経験の少なさから駒組時点で不利に陥ったことを感じていたという。 銀冠穴熊の経験豊富な穴眼鏡姉貴に対し事前研究でリードを奪い、中盤でも落ち着いた応手で緩めることなく快勝。感想戦終了後に放った『銀冠穴熊は潰れているということで』という強気な一言が筆者の心に強く残っている。との兄貴の研究と自信の一端が伺える好局であった。 a 本来の藤井システムでは端歩の打診はもう少し早いことが普通で、このタイミングでの端歩は藤井システムに見せかけた銀冠穴熊への誘導という意味合いもあっただろうか。 b 2017.7.22 竹俣‐中村真(マイナビ女子オープン) 詳しくは http://abcnshogiblog.com/blog-entry-332.html を参照のこと。なお増田四段によれば△5四銀に対し▲4八銀と引く変化で先手まずまずの分かれ。(https://twitter.com/yasuhiro297/status/855388659817660417) c スイッチシステムの基本形はhttps://twitter.com/YukiN_shogi/status/918121781952577536のように棒銀で繰り出していく形だという。本譜のように▲3六歩が突いてある場合は穴に潜るのを待ってから△6二玉とのこと。https://twitter.com/YukiN_shogi/status/924499605697339392
2: deteiugin (1815) 2018-01-07 07:40
『銀冠穴熊は潰れている』(修正版) ▲穴眼鏡(holespectacle)―△との(tono2048)観戦記 文責:でっていう(deteiugin) 昨年末に開幕したヨツンヴァインカップ(正式名称『戌年だよ。ヨツンヴァイン杯』)準決勝第二局が行われた。いよいよ大詰めとなる舞台に駒を進めたのは▲穴眼鏡姉貴と△との兄貴。いずれも上位進出を予想されていた実力者同士のゴールデンカードとなった本局はどのような展開を見せるのだろうか。 穴眼鏡姉貴は一回戦でかつどん兄貴の角交換四間飛車に対し終始手堅い差し回しで圧倒、二回戦でも頭蓋兄貴の向かい飛車からの攻めを丁寧に受け止め銀冠を無傷で残す快勝を見せた。界隈随一の手厚く、負けない将棋はどこまで進化を続けるのか。 一方のとの兄貴は一回戦で南部改式兄貴の仕掛けた乱戦に的確に対応、上位者の余裕を見せた。二回戦ではだいふく兄貴の向かい飛車に対し中盤のねじり合いから端攻めを決め制勝。序盤巧者のオールラウンダーが初戴冠を目指す。 [4]手目 いつものように居飛車を明示した穴眼鏡姉貴に対しとの兄貴は△4四歩と角道を止める趣向を見せた。振り飛車退治は穴眼鏡姉貴の十八番とするところだが果たして。 [6]手目 △4二飛 早くも四間飛車に構える。雁木の流行で△3二銀~△3三角と態度を保留する指し方も有力となっているが、用意してきた作戦で堂々と迎え撃つということか。 [16]手目 △9四歩 居玉のまま美濃囲いを作り、端歩を突く。藤井システムだ(a)。やはり穴熊に組ませての持久戦では分が悪いと見ているのだろう。ここまで猛スピードで進んでいるだけに予定通りの局面ということか。 [17]手目 ▲9六歩 端歩を突き返すのは銀冠穴熊を目指す駒組だ。居飛車穴熊との分岐点だが、ノータイムで指されただけに穴眼鏡姉貴も作戦を決めていることが伺える。 [31]手目 ▲6六角 銀冠穴熊の骨子となる一手。△6五桂の両取りを避けつつ玉を入場させる狙いのある柔らかい手だ。 [32]手目 △6五歩 後手番だけに代えて△5四銀~△6五銀~△5四銀と千日手狙いの駒組も考えられる。女流棋戦での類例もある局面だがここも5秒の小考で△6五歩(b) 。いったいどこまでが研究範囲というのか。 [40]手目 △6二玉 ついにとの兄貴の作戦が正体を現した。36手目△4一飛からの継続手で、手損ながら8筋に飛車を振りなおして玉頭を攻める狙いだ。ユキ(@YukiN_shogi)氏がtwitter上で発表した構想で、巷ではスイッチシステムなどと呼ばれている(c)。 [41]手目 ▲6八金右 39手目▲9九玉と合わせて73秒の考慮。いったん穴に潜った以上、しばらく受けに回る展開は甘受する方針だ。 [48]手目 △4二角 3三のままでは角が働かない。ここが8筋9筋を睨む好位置だ。 [53]手目 ▲5五銀 受け一方になるわけにはいかない。突き捨てた5筋を生かして天王山に銀が進出。検討室では外国人兄貴も交えた32人もの観戦者が熱戦を見守る。 [56]手目 △8六歩 94秒の考慮で慎重に拠点を構築。強烈な角のラインに加え端攻めも絡めれば後手の攻めが途切れることはなさそうだ。 [60]手目 △同金直 綾をつける焦点の▲5三歩に対する応手。検討室では自然な△同角が予想されていたが▲5四歩~▲4四銀や▲2四飛など大駒を捌かれる展開を嫌ったか。自ら角筋を止めるだけに気づきにくい手だが、指されてみると先手にこれといった攻め筋がない。落ち着いた指しまわしで検討室でもはっきりととの優勢の声が出始めた。 [64]手目 △9七歩 前手▲4四銀を手抜いてここで攻め合いに。仮に▲5三銀成ならば△同角で自然に角が働く。カナ駒を渡すと反動も猛烈なため穴眼鏡姉貴は苦しいが粘れるか。 [68]手目 △8四桂 △9五香などもありそうだが要の銀を狙って手厚く迫る。自玉はひとまず安泰なので攻めを切らさないことが肝要だ。 [75]手目 ▲8三歩 懸命に紛れを求める。△同飛と取らせて将来の▲8四銀や▲7五桂が飛車に当たるようにしている。 [81]手目 ▲8八玉 穴熊が崩壊した現状では早逃げも止むをえない。右辺への脱出に一縷の望みを託す。 [88]手目 △7六桂 しかしこの桂跳ねが決め手か。▲同銀なら△5七角▲6八金打△5八金で必至がかかる。後手玉は角を渡さなければ危ない筋すらない。 [92]手目 △8八成香 代えて△5八銀でも必至がかかるが詰ましにいく。 [98]手目 △5八金 うっかり△4五桂ではちょっとした事件に。一見上に逃がすようだがこちらが正着。 [100]手目 △6四角 にて穴眼鏡姉貴の投了となった。以下▲5六玉に△4五金までの詰み。盤上の角を綺麗に使った見事な収束で、との兄貴が決勝に駒を進めた。 終局直後、「研究が刺さりました」ととの兄貴が一言。42手目△8五歩までは研究範囲と話しており、相居飛車も想定したものの、序盤でリードを300~400点ほど奪えるこの戦型を研究していたという。感想戦では銀冠のまま右銀を繰り出す急戦や、▲3六歩を突かない変化についても調べられたがいずれも居飛車持ちの変化は見つからなかった。穴眼鏡姉貴もスイッチシステムの存在を知ってはいたものの実戦経験の少なさから駒組時点で不利に陥ったことを感じていたという。 銀冠穴熊の経験豊富な穴眼鏡姉貴に対し事前研究でリードを奪い、中盤でも落ち着いた応手で緩めることなく快勝。感想戦終了後に放った『銀冠穴熊は潰れているということで』という強気な一言が筆者の心に強く残っている。との兄貴の研究と自信の一端が伺える好局であった。
3: deteiugin (1815) 2018-01-07 07:57
『銀冠穴熊は潰れている』(再修正版) ▲穴眼鏡(holespectacle)―△との(tono2048)観戦記 文責:でっていう(deteiugin) 昨年末に開幕したヨツンヴァインカップ(正式名称『戌年だよ。ヨツンヴァイン杯』)準決勝第二局が行われた。いよいよ大詰めとなる舞台に駒を進めたのは▲穴眼鏡姉貴と△との兄貴。いずれも上位進出を予想されていた実力者同士のゴールデンカードとなった本局はどのような展開を見せるのだろうか。 穴眼鏡姉貴は一回戦でかつどん兄貴の角交換四間飛車に対し終始手堅い差し回しで圧倒、二回戦でも頭蓋兄貴の向かい飛車からの攻めを丁寧に受け止め銀冠を無傷で残す快勝を見せた。界隈随一の手厚く、負けない将棋はどこまで進化を続けるのか。 一方のとの兄貴は一回戦で南部改式兄貴の仕掛けた乱戦に的確に対応、上位者の余裕を見せた。二回戦ではだいふく兄貴の向かい飛車に対し中盤のねじり合いから端攻めを決め制勝。序盤巧者のオールラウンダーが初戴冠を目指す。 [4]手目 いつものように居飛車を明示した穴眼鏡姉貴に対しとの兄貴は△4四歩と角道を止める趣向を見せた。振り飛車退治は穴眼鏡姉貴の十八番とするところだが果たして。 [6]手目 △4二飛 早くも四間飛車に構える。雁木の流行で△3二銀~△3三角と態度を保留する指し方も有力となっているが、用意してきた作戦で堂々と迎え撃つということか。 [16]手目 △9四歩 居玉のまま美濃囲いを作り、端歩を突く。藤井システムだ(a)。やはり穴熊に組ませての持久戦では分が悪いと見ているのだろう。ここまで猛スピードで進んでいるだけに予定通りの局面ということか。 [17]手目 ▲9六歩 端歩を突き返すのは銀冠穴熊を目指す駒組だ。居飛車穴熊との分岐点だが、ノータイムで指されただけに穴眼鏡姉貴も作戦を決めていることが伺える。 [31]手目 ▲6六角 銀冠穴熊の骨子となる一手。△6五桂の両取りを避けつつ玉を入場させる狙いのある柔らかい手だ。 [32]手目 △6五歩 後手番だけに代えて△5四銀~△6五銀~△5四銀と千日手狙いの駒組も考えられる。女流棋戦での類例もある局面だがここも5秒の小考で△6五歩(b) 。いったいどこまでが研究範囲というのか。 [40]手目 △6二玉 ついにとの兄貴の作戦が正体を現した。36手目△4一飛からの継続手で、手損ながら8筋に飛車を振りなおして玉頭を攻める狙いだ。ユキ(@YukiN_shogi)氏がtwitter上で発表した構想で、巷ではスイッチシステムなどと呼ばれている(c)。 [41]手目 ▲6八金右 39手目▲9九玉と合わせて73秒の考慮。いったん穴に潜った以上、しばらく受けに回る展開は甘受する方針だ。 [48]手目 △4二角 3三のままでは角が働かない。ここが8筋9筋を睨む好位置だ。 [53]手目 ▲5五銀 受け一方になるわけにはいかない。突き捨てた5筋を生かして天王山に銀が進出。検討室では外国人兄貴も交えた32人もの観戦者が熱戦を見守る。 [56]手目 △8六歩 94秒の考慮で慎重に拠点を構築。強烈な角のラインに加え端攻めも絡めれば後手の攻めが途切れることはなさそうだ。 [60]手目 △同金直 綾をつける焦点の▲5三歩に対する応手。検討室では自然な△同角が予想されていたが▲5四歩~▲4四銀や▲2四飛など大駒を捌かれる展開を嫌ったか。自ら角筋を止めるだけに気づきにくい手だが、指されてみると先手にこれといった攻め筋がない。落ち着いた指しまわしで検討室でもはっきりととの優勢の声が出始めた。 [64]手目 △9七歩 前手▲4四銀を手抜いてここで攻め合いに。仮に▲5三銀成ならば△同角で自然に角が働く。カナ駒を渡すと反動も猛烈なため穴眼鏡姉貴は苦しいが粘れるか。 [68]手目 △8四桂 △9五香などもありそうだが要の銀を狙って手厚く迫る。自玉はひとまず安泰なので攻めを切らさないことが肝要だ。 [75]手目 ▲8三歩 懸命に紛れを求める。△同飛と取らせて将来の▲8四銀や▲7五桂が飛車に当たるようにしている。 [81]手目 ▲8八玉 穴熊が崩壊した現状では早逃げも止むをえない。右辺への脱出に一縷の望みを託す。 [88]手目 △7六桂 しかしこの桂跳ねが決め手か。▲同銀なら△5七角▲6八金打△5八金で必至がかかる。後手玉は角を渡さなければ危ない筋すらない。 [92]手目 △8八成香 代えて△5八銀でも必至がかかるが詰ましにいく。 [98]手目 △5八金 うっかり△4五桂ではちょっとした事件に。一見上に逃がすようだがこちらが正着。 [100]手目 △6四角 にて穴眼鏡姉貴の投了となった。以下▲5六玉に△4五金までの詰み。盤上の角を綺麗に使った見事な収束で、との兄貴が決勝に駒を進めた。 終局直後、「研究が刺さりました」ととの兄貴が一言。42手目△8五歩までは研究範囲と話しており、相居飛車も想定したものの、序盤でリードを300~400点ほど奪えるこの戦型を研究していたという。感想戦では銀冠のまま右銀を繰り出す急戦や、▲3六歩を突かない変化についても調べられたがいずれも居飛車持ちの変化は見つからなかった。穴眼鏡姉貴もスイッチシステムの存在を知ってはいたものの実戦経験の少なさから駒組時点で不利に陥ったことを感じていたという。 銀冠穴熊の経験豊富な穴眼鏡姉貴に対し事前研究でリードを奪い、中盤でも落ち着いた応手で緩めることなく快勝。感想戦終了後に放った『銀冠穴熊は潰れているということで』という強気な一言が筆者の心に強く残っている。との兄貴の研究と自信の一端が伺える好局であった。
4: deteiugin (1815) 2018-01-07 08:23
『銀冠穴熊は潰れている』(再々修正版) ▲穴眼鏡(holespectacle)―△との(tono2048)観戦記 文責:でっていう(deteiugin) 昨年末に開幕したヨツンヴァインカップ(正式名称『戌年だよ。ヨツンヴァイン杯』)準決勝第二局が行われた。いよいよ大詰めとなる舞台に駒を進めたのは▲穴眼鏡姉貴と△との兄貴。いずれも上位進出を予想されていた実力者同士のゴールデンカードとなった本局はどのような展開を見せるのだろうか。 穴眼鏡姉貴は一回戦でかつどん兄貴の角交換四間飛車に対し終始手堅い差し回しで圧倒、二回戦でも頭蓋兄貴の向かい飛車からの攻めを丁寧に受け止め銀冠を無傷で残す快勝を見せた。界隈随一の手厚く、負けない将棋はどこまで進化を続けるのか。 一方のとの兄貴は一回戦で南部改式兄貴の仕掛けた乱戦に的確に対応、上位者の余裕を見せた。二回戦ではだいふく兄貴の向かい飛車に対し中盤のねじり合いから端攻めを決め制勝。序盤巧者のオールラウンダーが初戴冠を目指す。 4手目 いつものように居飛車を明示した穴眼鏡姉貴に対しとの兄貴は△4四歩と角道を止める趣向を見せた。振り飛車退治は穴眼鏡姉貴の十八番とするところだが果たして。 6手目 △4二飛 早くも四間飛車に構える。雁木の流行で△3二銀~△3三角と態度を保留する指し方も有力となっているが、用意してきた作戦で堂々と迎え撃つということか。 16手目 △9四歩 居玉のまま美濃囲いを作り、端歩を突く。藤井システムだ(a)。やはり穴熊に組ませての持久戦では分が悪いと見ているのだろう。ここまで猛スピードで進んでいるだけに予定通りの局面ということか。 17手目 ▲9六歩 端歩を突き返すのは銀冠穴熊を目指す駒組だ。居飛車穴熊との分岐点だが、ノータイムで指されただけに穴眼鏡姉貴も作戦を決めていることが伺える。 31手目 ▲6六角 銀冠穴熊の骨子となる一手。△6五桂の両取りを避けつつ玉を入場させる狙いのある柔らかい手だ。 32手目 △6五歩 後手番だけに代えて△5四銀~△6五銀~△5四銀と千日手狙いの駒組も考えられる。女流棋戦での類例もある局面だがここも5秒の小考で△6五歩(b) 。いったいどこまでが研究範囲というのか。 40手目 △6二玉 ついにとの兄貴の作戦が正体を現した。36手目△4一飛からの継続手で、手損ながら8筋に飛車を振りなおして玉頭を攻める狙いだ。ユキ(@YukiN_shogi)氏がtwitter上で発表した構想で、巷ではスイッチシステムなどと呼ばれている(c)。 41手目 ▲6八金右 39手目▲9九玉と合わせて73秒の考慮。いったん穴に潜った以上、しばらく受けに回る展開は甘受する方針だ。 48手目 △4二角 3三のままでは角が働かない。ここが8筋9筋を睨む好位置だ。 53手目 ▲5五銀 受け一方になるわけにはいかない。突き捨てた5筋を生かして天王山に銀が進出。検討室では外国人兄貴も交えた32人もの観戦者が熱戦を見守る。 56手目 △8六歩 94秒の考慮で慎重に拠点を構築。強烈な角のラインに加え端攻めも絡めれば後手の攻めが途切れることはなさそうだ。 60手目 △同金直 綾をつける焦点の▲5三歩に対する応手。検討室では自然な△同角が予想されていたが▲5四歩~▲4四銀や▲2四飛など大駒を捌かれる展開を嫌ったか。自ら角筋を止めるだけに気づきにくい手だが、指されてみると先手にこれといった攻め筋がない。落ち着いた指しまわしで検討室でもはっきりととの優勢の声が出始めた。 64手目 △9七歩 前手▲4四銀を手抜いてここで攻め合いに。仮に▲5三銀成ならば△同角で自然に角が働く。カナ駒を渡すと反動も猛烈なため穴眼鏡姉貴は苦しいが粘れるか。 68手目 △8四桂 △9五香などもありそうだが要の銀を狙って手厚く迫る。自玉はひとまず安泰なので攻めを切らさないことが肝要だ。 75手目 ▲8三歩 懸命に紛れを求める。△同飛と取らせて将来の▲8四銀や▲7五桂が飛車に当たるようにしている。 81手目 ▲8八玉 穴熊が崩壊した現状では早逃げも止むをえない。右辺への脱出に一縷の望みを託す。 88手目 △7六桂 しかしこの桂跳ねが決め手か。▲同銀なら△5七角▲6八金打△5八金で必至がかかる。後手玉は角を渡さなければ危ない筋すらない。 92手目 △8八成香 代えて△5八銀でも必至がかかるが詰ましにいく。 98手目 △5八金 うっかり△4五桂ではちょっとした事件に。一見上に逃がすようだがこちらが正着。 100手目 △6四角 にて穴眼鏡姉貴の投了となった。以下▲5六玉に△4五金までの詰み。盤上の角を綺麗に使った見事な収束で、との兄貴が決勝に駒を進めた。 終局直後、「研究が刺さりました」ととの兄貴が一言。42手目△8五歩までは研究範囲と話しており、相居飛車も想定したものの、序盤でリードを300~400点ほど奪えるこの戦型を研究していたという。感想戦では銀冠のまま右銀を繰り出す急戦や、▲3六歩を突かない変化についても調べられたがいずれも居飛車持ちの変化は見つからなかった。穴眼鏡姉貴もスイッチシステムの存在を知ってはいたものの実戦経験の少なさから駒組時点で不利に陥ったことを感じていたという。 銀冠穴熊の経験豊富な穴眼鏡姉貴に対し事前研究でリードを奪い、中盤でも落ち着いた応手で緩めることなく快勝。感想戦終了後に放った『銀冠穴熊は潰れているということで』という強気な一言が筆者の心に強く残っている。との兄貴の研究と自信の一端が伺える好局であった。
5: deteiugin (1815) 2018-01-07 13:02
註 (a) 本来の藤井システムでは端歩の打診はもう少し早いことが普通で、このタイミングでの端歩は藤井システムに見せかけた銀冠穴熊への誘導という意味合いもあっただろうか。 (b) 2017.7.22 竹俣‐中村真(マイナビ女子オープン) http://abcnshogiblog.com/blog-entry-332.html (銀冠穴熊対策の玉頭銀) 詳細は以上参照のこと。なお増田四段によれば△5四銀に対し▲4八銀と引く手筋で先手まずまずの分かれという。 https://twitter.com/yasuhiro297/status/855388659817660417 (c) スイッチシステムの基本形は https://twitter.com/YukiN_shogi/status/918121781952577536 のように棒銀で繰り出していく形だという。本譜のように▲3六歩が突いてある場合は▲9八香を待ってから△6二玉とのこと。 https://twitter.com/YukiN_shogi/status/924499605697339392 記事を引用させていただきましたユキ(@YukiN_shogi)様、あべしん(@absn11)様ありがとうございました。また、銀冠穴熊の育ての親であり、将棋の可能性を広めてくださった増田康宏四段におかれましては益々のご活躍を願っております。
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